失敗しない宴会のコツ

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T8の3号店出店を狙って、上大岡付近でも物件探しを始めていた矢先のことだった。 即座に受けたWが出店申請のため、T8本部に出向いて驚いた。
同じビルに他のオT8のルールでは、競合した場合は双方に出店許可が下りない。 のどから手が出るほど欲しい物件だが、あきらめざるを得ないのか。
地団駄踏んで悔しがった。 そんな時、取引先であるSが独自に開発した「S屋」を、チェーン展開するらしいという話を聞きつけた。
Wは、1も2もなく飛びついた。
「再開発が進行中とはいえ、いわば横浜の下町。 S屋の雰囲気は、赤坂や銀座、六本木でなければマッチしない」と消極的なS本社の意見を振り切り、強引に出店許可を取り付けた。
上大岡は横浜の副都心だ。 銀座や赤坂より民度が低いなんて言わせない。
T82店を大成功させた渡美商事の実力を見せてやる。 若いWの心は、はやった。
銀行借り入れや自己資金で1億1千万円の開業資金を工面、開店にこぎ着けた86Wは、オープン2日目にして早くも、撤退の決断を迫られる。 初めて経験する居酒屋T8のチェーン店、東京・高円寺北口店と大和店が大当たりした勢いを駆って、上大岡駅近くに出店した洋風居酒屋「S屋」。
開店初日も2日目も、客の入りはまずどこか大正ロマンの薫りを漂わせた高貴な店内の様子は、確かにこれまで、近辺の店では浸れなかった新しい雰囲気を醸し出している。 「苦労して開店したかいがあった。
きっと軌道に乗る」プロジェクトチームのメンバーは、だれしもがそう思ってほっとした。 Wの目には違って映った。
Wフードサービス社内報のタイトル。 S屋の失敗で、初めて経営危機に見舞われた時、Wは日記にこう記した。

「体の重い亀になろう。 風が吹いても雨が降っても、後退しない体の重さを持とう。
目標を明確に持ち、どっしり進む亀になろう」少なく、客同士が互いに気を遣って遠慮しているようだ。 T8の時とは明らかに違う、店全体に漂う、Wは感じ取った。
「緊張を強いるような店に、お客さまは二度と来てくれない。 立地を間違えた。
上大岡にS屋は、やはりマッチしない。 T8の成功でいい気になり、前がよく見えていなかった。
判断ミスだ」開店2日目の夜、Wは1人、撤退の決断を固めた。

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